Nobuhiro Ishihara : DEERMAN ODYSSEIA2014 3.14 - 4.19オープニングレセプション |
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"back to the sea", 2014, acrylic on canvas, 122 x 203 cm |
会場:nca | nichido contemporary art
会期:2014年3月14日(金)-4月19日(土)
営業時間:火 – 土 11:00 – 19:00 (日・月・祝 休廊)
レセプション:3月14日(金)18:00 – 20:00
この度、nca | nichido contemporary artは、石原延啓による新作個展「DEERMAN ODYSSEIA」を開催いたします。
石原は、私たちが暮らす現代の都市は人々の様々な思い、旧い記憶や過去の出来事などが幾重もの層になって重なり合って出来ていると考え、その深層へ飛び込み探索をするパイロットとして「鹿男–deer man-」というキャラクターを創りました。近年石原は日本に限らずオーストリア、韓国、ギリシャ、ブラジル等世界各国のレジデンスプログラムや展覧会に参加し、自身の分身とも言うべきdeer manが目にしたモノやコトを作品にしてきました。deer manは各地を旅をすることで得たさまざまな物語や出来事に影響を受けながら変容を重ねていきます。本展では放浪しながら見てきた事象をランダムに並べることで、私たちの足元の更に下にある、普段は慣れ親しまない異なるレイヤーを浮かび上がらせることを試みています。
Deerman Odysseia
Deer manは、石原延啓が2005年に奈良のお水取りの儀式を観に行った際、夜中に眼を光らせて野性のままに徘徊し、神聖な領域と現実を行き来するかに見える鹿たちと出会った衝撃から生まれたという。
自然と文明、動物と人間、様々な時間の流れや時空を超えた媒介者として世界各地の神話や民話に登場する鹿。その鹿と人間が合体した存在としてのDeer man——―鹿男(女)は、様々な階層を興味の赴くままに駆け回り、掘り起こし、新しいイメージを作りあげる。
石原の日本古来の神話への興味は、Deer manを通じて世界各地に根付いた神話や民話、さらにはその土地の持つ生きた歴史への興味へと広がって来た。例えば、ニューヨーク、韓国の京畿道や仁川広域市、ギリシャのミコノス島、ブラジルのサンパウロなどに石原が滞在した際には、その場の歴史や人々の記憶を基にその土地に特有なDeer manを作り出して来た。サンパウロでは、住民対象のワークショップで集めた神話の登場人物達を呑み込むことでDeer manが生成する。また、Deer manの多くは植物や花でできた角を持つことも、地球上で一番古い種としての生命体である植物との繋がりが伺える。
今回の展示では、特定の場所というよりは様々な階層を往き来する存在体、象徴的な意味でのDeer manを描き出している。ただし、その背後には彼が1999年に福島県いわき市で行った制作、そして3.11以降に復興援助活動のため再訪した福島を含む東北での体験の影響がうかがえる。1999年にいわき市で描かれた竜のような生命体は、昨年ギリシャのミコノスビエンナーレにて風車に巻きつくかたちで再生されたが、今回は分解されてDeer manの中に蘇り、鎮魂を祈っているようでもある。
私たち人間は、現代社会が要求する規則やシステムを如何に上手く利用しつつ効率的に行動するかを日々迫られている。その原理の中では人間も地球上に寄生する種の一つであり、地球は人間の原理では回ってはいない事実が宙吊りにされ、忘れ去られている。人間の価値観など長い地球史にとっては無意味であるという事を考える余白すらない。だからこそDeer manは、私達の代わりに生死の境目である黄泉比良坂(よもつひらさか)を超え、地球の中心まで潜り、無意識の混沌とした領域と交流することで、地球との一体感を取り戻そうと試みるのではないだろうか。
椿 玲子
<石原 延啓>
1966年 神奈川県生まれ
1991年 スクール・オブ・ビジュアル・アーツ卒業(ニューヨーク、アメリカ)/ 1989年 慶応義塾大学経済学部卒業(東京)
<近年の主な展覧会>VAIVÉM, SESC Pinheiros サンパウロ(2013) | ミコノスビエンナーレ ミコノス島・ギリシャ(2013) | 越後妻有アートトリエンナーレ 新潟(2012年) | Gyeonggi Creation Center 韓国(2010年) | Quartier 21 Museum ウィーン(2010年) | Tufts University Art Gallery ボストン (2009) nca | nichido contemporary art 東京(2009年)| I-20 Gallery ニューヨーク(2008年)
椿 玲子
森美術館アソシエイト・キュレーター、成安造形大学客員教授(2013‐2014年度)。京都大学大学院人間・環境学研究科創造行為論修士、パリ第1 大学哲学科現代美術批評修士取得後、2002年より森美術館所属。森美術館では「アーキラボ展」、「アフリカ・リミックス展」、「医学と芸術展」、「フレンチ・ウィンドウ展」などを担当。また「MAMプロジェクト」シリーズでは第7、11、16、19回目を企画、現在「MAMプロジェクト022」を企画中。美術館外では、「agnès b in 祇園」(2004、京都)、「ShContemporary BOD」(2008、上海)、「隠喩としての宇宙」(2012、京都)、Identity Vol.9-curated by Reiko Tsubaki –“展(2013、nca 東京)を企画し、執筆・講演なども行う。