2021 2.26 - 3.27
Installation >>
SMALL.
会場:nca | nichido contemporary art
会期:2021年2月26日(金)- 3月27日(土)
営業時間: 火 – 土 11:00 – 19:00 (日・月・祝 休廊)
出展作家:
ブスイ・アジョウ | 黃品玲(ピンリン・ホワン)| デュサディー・ハンタクーン | 石塚隆則
劉致宏(ジーホン・リュウ)| ジャン=リュック・モーマン | タミー・グエン | 坂本和也 | タワン・ワトゥヤ
Busui Ajaw | Pin-Ling Huang | Dusadee Huntrakul | Takanori Ishizuka | Chih-Hung Liu
Jean-Luc Moerman | Tammy Nguyen | Kazuya Sakamoto | Tawan Wattuya
nca | nichido contemporary artは小品展、「SMALL.」を開催いたします。本展は上記ncaのアーティストの小さいスケールの表現のみにフォーカスしています。現在も続く深刻な新型コロナウィルスのパンデミックの発生によって家で過ごす時間が多い今、実物を観に行くことを制限され、オンラインでの美術鑑賞も主流となりました。私たちはこれまでの経験をもとに、作品のスケールやテクスチャーを頭のなかで想像しなければなりません。各々の生活環境や感覚によってイメージするサイズ感は異なりますが、上記アーティストはこれまでに国際展や美術館で大規模な作品やインスタレーションを手掛けてきました。作品の大小に関わらず、大きな空間での展示を常にイメージしながら制作をしています。小さいながらも各々が持つ強烈な存在感が枠を超え、私たち鑑賞者の想像力をかきたてます。
ブスイ・アジョウの描くペインティングは、彼女の背景と密接につながっています。東南アジア本土の高地から国境を越えて暮らす遊牧少数民族(アカ族)の職人の家に生まれたアジョウの芸術的実践は家庭環境から得たものです。デジタル技術や電気の普及など、近年急激に変化した生活様式によって失われつつあるアカ族の伝統文化や風習、歴史の痕跡を絵画や立体に表そうと試みます。
石塚隆則の想像する作品には実在しない、奇妙で小動物が多く登場し、コミカルかつシニカルで独特な世界を創ります。それは自身の興味である日本神話や民俗学、動物をモチーフに当時の世相を表した戯画や錦絵に大きな影響を受けています。それらは石塚に代わって自身の世界や、生活環境、葛藤などさまざまな事象を伝えます。
坂本和也は自身の趣味である水草の飼育(アクアリウム)を通して、生態系の構成要素のなかに現代の社会環境との類似性をみたことから、植物をモチーフにして物事の内面を表そうとしています。反復と増殖を繰り返しながら綿密に描かれる多種多様の植物は生命を維持するために変容を繰り返す進化の過程を描いているようです。
リュウ・ジーホンは日常生活や周囲の環境、また旅先でみた風景や事象を一瞬で切り取り、絵画に表します。それは自然景観や事物の観察だけなく、複雑な感情や感覚、時間を多面的に捉えます。表現は絵画にとどまらず、プロジェクトやテーマによってインスタレーションや、映像、文字、立体など様々な素材を用います。
タミー・グエンはベトナム戦争の影響でアメリカに渡ったインドシナ難民の娘として育った自身のアイデンティと記憶を元にしながら、今も絶えない人為的戦争によってもたされるディアスポラ(移民)やテロの問題に焦点を当てて作品を制作しています。無限の想像力と地政学の研究を通して、生存者の一人として地域環境の歴史を辿り、イメージを幾重にも重ねながら物語を紡ぎます。
デュサディー・ハンタクーンの手がけるドローイングや小さな立体作品は、個人と集団とが交わる点を強調しています。非常に比喩的で、ときにシュールな形態はまるで純真な子供が描く絵を想起させます。また、それは数世紀以上経ったようにも見える一方で、つい先日創られたもののようにも見えます。国や性別、年代を問わず、私たち人間の記憶や感情には共通するものがあることを思わせ、それは人間の進化の一つの明確なサインであるかもしれません。
ホワン・ピンリンはこれまでの体験や記憶を断片的に描きとめたスケッチブックをもとに、風景画を描いています。それはどこでもない場所でありながら、どこか懐かしさと心地よさを感じます。柔らかな色彩と質感、筆の痕跡が独特の世界を創り出します
ジャン=リュック・モーマンはパブリックスペースや美術館内を覆い尽くすような大規模なペインティングで一躍注目を集め、以降国内外の美術館や国際展での展示、また企業とのコラボレーションを多数行うなど幅広く活躍しています。モーマンは描く対象の大小に関わらず瞬時に構図を捉え、独特のイメージを反復しながら躊躇なく描いていきます。枠にとらわれず大胆かつ綿密で流れるようなペインティングは、各々の環境やモノにすばやく呼応し、視点によって絶えず姿が変わります。
タワン・ワトゥヤは様々な人たちのポートレートや動物を描いています。ここ数年はあえてコントロールの困難な水彩を用いています。水彩独特のぼかし、にじみがあいまって被写体が歪んでいるかのようにも見え、隠された人々の内面や裏側がみえてくるようです。タワンは肖像画を通し、自身が問題視している自国タイで続く政治的混乱や民族間の紛争、社会的ヒエラルキー、外見の重要性などを鋭く批判し、現代人が持つ固定観念や矛盾を投げかけます。