nca | nichido contemporary art

EXHIBITION
2011.6/24 - 7/23


Identity VII - curated by Fumihiko Sumitomo-

Installation >>

オープニングレセプション:
6/24(金)18:00 - 20:00
パフォーマンス
橋本 聡 6/25(土) 15:00 -



会場:nca | nichido contemporary art
会期:2011年6月24日(金)-7月23日(土)
営業時間:火 – 土 11:00 – 19:00 (日・月・祝 休廊)
レセプション:6月24日(金)18:00 – 20:00

この度、nca | nichido contemporary artは、グループ展、“identityⅦ- curated by Fumihiko Sumitomo-.”を開催いたします。
毎年恒例のグループ展、“Identity”展は第7回目となり、本展では住友文彦氏をゲストキュレーターとして迎え、国内外のアーティストの作品を発表いたします。

=====================================================================

ゆっくり急げ Festina Lente

何が起きても、世の中は動き続け、変化を止めることはありませんでした。しかし、これまでと未来への歩みは同じではなく、絶えず固定化を求める力に抗して変化しなければならないと思います。

1985年にイタロ・カルヴィーノが「新たな千年紀のための六つのメモ」と題して行った講義は、「軽さ」と「速度」というじつにこの作家らしい価値の提案から語られていました。人間の形象や天体、都市から重さを取り除こうとしてきた、と自分の仕事について述べ、しかしそれは夢のように解体されてしまうものであってはならない、と考えていたゆえに、それに続く価値には「正確さ」、「視覚性」、「多様性」が挙げられていたのです。さらに付け加えると、この世を去ってしまったために書かれることがなかった最後の価値は「堅固さ」でした。
彼は言葉のみならず、宇宙や生物、数学などに関する知識を通して世界を精微に見つめることができた人です。そうした科学は人間中心の偏狭な見方をうみだすこともあります。いっぽうで芸術を享受するときに人々が働かせる感性は、正確で透明な世界の姿を前に人を謙虚にして、自我の限界を突きつけることができるのではないでしょうか。

ちょうど憂愁が軽くなった悲しみであるのと同様に、諧謔(ユーモア)は肉体の重さを失った喜劇性であり、それによって自我や世界や、またそれを構成する関係の網の目を疑わしいものにさせてしまうものなのであります。
(イタロ・カルヴィーノ『アメリカ講義-新たな千年紀のための六つのメモ』岩波文庫、2011年、47頁)

注意深い観察と問いかけの力にはゆっくりとした持続の時間があります。そして、しなやかな想像による跳躍には、現実の重さを振り払う速度が備わるべきでしょう。「ゆっくり急げ」-

カルヴィーノが好んだ格言を、今こそ皆さんに差し出したいと思います。
                                             住友文彦 

=====================================================================

住友文彦 / Fumihiko Sumitomo : 1971年生まれ。キュレーター。韓国、中国、日本のアーティストが参加した「アウト・ザ・ウィンドウ」展(国際交流基金アジアセンター/2004)、戦後の美術から最新の動向までの取り組みを取り上げた「Possible
Futures:アート&テクノロジー過去と未来」展(ICC/2005)を企画。また、日本の現代美術を紹介する展覧会として「美麗新世界」(中国/2007)などの企画にも関わる。2008年には「川俣正[通路]」展(東京都現代美術館)のキュレーティングを手掛け、ヨコハマ国際映像祭2009のディレクター、昨年はメディアシティソウル2010の共同キュレーターをつとめる。リクリット・ティラヴァニャに関する「身体の贈与」(共著『表象のディスクール6創造』、東京大学出版会、2000年)、「映像の中へ」(『21世紀の出会い-共鳴、ここ・から』、金沢21世紀美術館、淡交社、2004年)、「複雑で便利な時代と見えなくなるアート」(共著『21世紀における芸術の役割』未来社、2006年)、「キュレーターになる」(共著、フィルムアート社、2009年)などの論考がある。


PAST EXHIBITION