IN BETWEEN / 境界2022.5.13 - 6.18オープニングレセプション:
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© Sokchanlina Lim |
場所:nca | nichido contemporary art
会期:2022年5月13日(金)- 2022年6月18日(土)
営業時間:火 – 土 11:00 – 19:00 (日・月・祝日休廊)
出展作家:
ソクチャンリナ・リム (Sokchanlina Lim) / リナ・ファー (Lina Pha)
ピヤラット・ピヤポンウィワット (Piyarat Piyapongwiwat) / アリン・ルンジャーン (Arin Rungjang)
タワン・ワトゥヤ (Tawan Wattuya)
nca | nichido contemporary artは、国際的に活躍するタイおよびカンボジア出身の5名のアーティスト、ソクチャンリナ・リム、リナ・ファー、ピヤラット・ピヤポンウィワット、アリン・ルンジャーン、タワン・ワトゥヤによるグループ展「IN BETWEEN / 境界」を開催いたします。
東南アジアは他民族、多宗教からなり、複雑な歴史背景と政治、多様な文化が共存し、近代の飛躍的な経済成長によって熱気にあふれています。盛り上がる一方で、都市と地方、民族間等による格差が生まれ、表には見えない問題が生じているのも現状です。上記5名のアーティストは各々の背景をもとに、国内外を行き来しリサーチを重ねて自国が抱える様々な問題を浮き彫りにし、自由なアプローチによって作品に表しています。従来の日常が非日常となるその境界線上の姿、未来への課題を各々がシニカルかつユーモアに表現します。本展では、今回の為に制作された新作、および近作を発表します。
ソクチャンリナ・リム(1987年カンボジア・プレイベン生まれ、プノンペン在住)は現代のカンボジアにおける政治や経済、環境、文化的変化やその問題に焦点をあて、写真、映像、パフォーマンスなど多様な手法を用いて作品に表します。巨大なグローバル資本と様々な政治的思惑によって急速に変化する社会や風景を日々記録し、これまでの地域のコミュティーや文化、自然が失われていく未来に警鐘を鳴らします。本作、「国道5号線 2020」は、カンボジアの首都プノンペンからタイの国境を結ぶ国道5号線の拡張工事のために、道路沿いの建築物や景観、住民に与えた影響を記録した、2015年からから続く継続的なプロジェクトです。
リナ・ファー(1986年カンボジア生まれ)は自身が過ごした児童養護施設で行われた写真のワークショップに参加したことがきっかけで写真に興味を持ちます。フォトジャーナリストとしてキャリアをスタートし、その後は社会問題をベースにしながら個人的な事象を象徴的に写真で表現をしてきました。本シリーズ、「ターゲット」は、生きるためにやむを得ず行った違法行為によって職を失い、社会に取り残された人たちにフォーカスしています。都市の急速な都市発展の裏で、地方の農村部では経済格差が進み、その影響は子どもたちにまで及びます。ファーは低賃金での過酷な労働、国境を越えて出稼ぎに行かざるを得ない人々、知らないうちに犯罪共犯者の標的とされた人たちなど、出口の見えない貧困の悪循環が生まれている現状を問題視し、作品に表します。
ピヤラット・ピヤポンウィワット(1977年タイ・プレー生まれ、チェンマイ在住)は、グローバル化した経済や社会下における個々の声を通して問題やその状況を明らかにし、背景に複雑に結びついた世界をビデオや写真、インスタレーションなどを用いて視覚化し、私たちに疑問を投げかけます。本作、「From Somewhere to Nowhereどこから、どこへともなく」(2021)では、東南アジアにおける資源採掘や植民地化、絶滅、また資本制生産様式の影響についてフィールドリサーチを行い、様々な資料を混ぜながら視覚化しています。同じ過ちを繰り返さないため、これまでアート関係者含む、多くの研究家によって各々の興味のあるテーマをもとに、植民地時代について歴史的に研究されています。しかしながら10年以上にわたってこの問題を研究し、実践してきたピヤポンウィワットは、植民地主義がいまだ現代社会に、形を変えながらも根強く残っていること強く主張しています。
アリン・ルンジャーン(1975年タイ・バンコク生まれ、在住)はタイにおけるインスタレーションアートのパイオニアであり、その活動は東南アジアの歴史やシンボル、記憶と密接に関わり、社会、経済、政治の変革が個人の生活に与える影響を取り上げています。本映像作品、「246247596248914102516... And then there were none(そして誰もいなくなった)」は、5年毎にドイツ、カッセルで開催される国際展ドクメンタ14(2017)のために制作された作品です。タイトルにある数字はコードシステムを利用しており、タイの歴史上重要な出来事に関する現在では非常に機密性が高いと数字であるといわれ、今も検閲が行われています。例えば、2462475は、仏教暦2475年(西暦1932年)6月24日に起こったシャム革命の日で政治体制が絶対王政から立憲君主制に変わりました。ルンジャーンは第二次世界大戦中に東南アジアで唯一枢軸国を支持したタイとドイツの歴史的なつながりに興味を持ち、作品では歴史がどのように書き換えられ、道具化されているか、暴力行為や戦争が正当化される現実を1970年代にドイツの石油会社で働いていた自身の父の物語を織り交ぜながら作品に表します。
タワン・ワトゥヤ(1973年タイ・バンコク生まれ、在住)は様々な人たちのポートレートや動物を描いています。ワトゥヤは肖像画を通し、自身が問題視している自国タイで続く政治的混乱や民族間の紛争、社会的ヒエラルキー、外見の重要性を鋭く批判し、現代人が持つ固定観念や矛盾を投げかけます。本展の新作では冷戦をテーマにしています。それは経済や外交だけではなく、産業、メディア、スポーツや文化にも大きな影響を与えました。思い出のポップカルチャーやエンターテインメントを改めて振り返った時、そこにはプロパガンダの媒体として利用され、今も大きな影響を与えていることに事に気づいたワトゥヤは冷戦に関する娯楽メディアに興味を持ちます。自身の記憶からイメージを断片的に広い集め、リサーチし、コラージュすることで様々な視点から問題を浮き彫りにします。また、本シリーズでは近年用いていた水彩表現から離れ、アクリルを用いています。