nca new generation project
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会場 : nca | nichido contemporary art
会期 : 2015年5月29日(金)– 6月27日(土)
営業時間 : 火 – 土 11:00 – 19:00(日・月・祝日休廊)
レセプション : 2015年5月29日(金)18:00 – 20:00
出展アーティスト : 今西真也|菊地良太|坂本和也
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この度、nca | nichido contemporary artはグループ展「Sensing Body」を開催いたします。
抽象表現主義におけるジャクソン・ポロック(1912–1956)やヌーボー・レアリスムを代表するイヴ・クライン(1928–1962)から具体の白髪一雄(1924–2008)まで、一瞬のパフォーマティブなアクションを、画面上に留めんと試みた作品は、多くの芸術運動で非常に重要な役割を担ってきたといえます。
今世紀に入って以降のインターネットとデジタル・デバイスの発達に伴い、コミュニケーション手段としてのSNSに加えネット・バンキングやECサイトの普及・拡大は、私達の生活を激変させました。
ネット社会の仮想性、匿名性が現実世界を侵食するに伴い、私達は自らの存在証明たる自身の肉体に対する関心を強めてきました。また、我が国においては、未曾有の大災害である東日本大震災が、奇しくも自らが拠って立つ身体の重要性を再認識させたともいえるでしょう。
近年、身体的な行為に焦点を当てた表現が、新世代の日本人アーティストの作品にもみられます。本展では身体性をテーマに、3名のアーティスト:今西真也|菊地良太|坂本和也 による作品を発表いたします。
今西真也はキャンバスに油絵具を巧みに塗り重ね、筆致の跡を力強く残しながら削っていく行為を繰り返し描いていきます。
近距離から観る素材のもつディテールから一変、作品から遠く離れた時に観えてくるイメージは墜落した飛行機や落ちた椿など、退廃や終わりを連想させるイメージを描いています。しかし一方で、それは再生や新たな始まりを想起させ、生と死が常に表裏一体の関係であることを表しています。素材とイメージ、視点と距離との関係性を探りながら、私たちが共通認識している事柄のあいまいさ、不確かさを提示します。
菊地良太はフリークライマーであった自身の経歴から、都市にある公共の建物やモニュメントに登り、その一部となった自身の肉体を作品化しています。安全性に最大限配慮された建造物の盲点を突き、自らの肉体で都市をスキャンすることで、新しい視点から地域に対する理解を我々に促します。都市をキャンバスに見立て、作品に相応しい場所をリサーチしながら描いていく菊地の行為は、従来と異なる新しいグラフィティー表現の可能性を拡げます。
坂本和也はここ数年、一貫して水草を描いています。坂本が描く、多種多様で複雑に絡み合う植物は、厚く盛られた絵の具とあいまって、水中に引き込まれていくような感覚を引き起こします。自然豊かな所で生まれ、日常に美しい緑や水を肌で感じて育った坂本にとって水草を描くことは必然であり、自分自身の存在意義を問う行為でもあるといいます。フィジカルに反復と増殖をひたすらに繰り返しながら綿密に描かれるそれらは、生命を維持すべく変容し続けていく進化そのものを描いているようです。また、同時にグローバル化された現代社会において、個人や集団間に存在する様々な差異を競争優位の源泉とする多様性に富んだエコ・システムを想起させます。
上記アーティストのひとつひとつの筆致/行為は彼らの意思を表わすと共に、強い存在感を持ってそこに痕跡を残します。作品の画面に現れる肉体的な感覚は、事前の綿密で計算された画面構成や色彩によって取って代わられることで、新しい世代による表現の大いなる可能性を観る者に示唆します。
ncaにとって新たな試みである新世代のアーティスト表現にフィーチャーした今回のプロジェクトは、コレクターである宮津大輔氏との共同企画によって実現しました。
宮津大輔(みやつだいすけ)
1963年 東京都出身。アート・コレクター、京都造形芸術大学客員教授。都内の企業に勤めながら、収集したコレクションやアーティストと共同で建設した自宅が、デリム現代美術館(韓国・ソウル)での展示をはじめ、国内外で広く紹介される。2011年7~9月、MOCA TAIPEI(台湾・台北)で全館を使った大規模なコレクション展が開催される。文化庁「現代美術の海外発信に関する検討会議」委員、"WONDER SEEDS"(トーキョーワンダーサイト)2010~14年審査員等を歴任。近著『現代アート経済学』(光文社新書)や『現代アートを買おう!』(集英社新書/中国語・簡体字版・中国 金城出版/繁体字版・台湾 Uni Books)等の著者がある。