ジン・メイヤーソン「nowa days」2015 11.27 - 2016 1.23オープニングレセプション |
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©Jin Meyerson |
場所:nca | nichido contemporary art
会期:2015年11月27日(金)-2016年1月23日(土)
営業時間:火 – 土 11:00 – 19:00 (日・月・祝 休廊)
レセプション:11月27日(金)18:00 – 20:00 (作家も在廊いたします。)
nca | nichido contemporary artは韓国出身アーティスト、ジン・メイヤーソンによる個展を開催いたします。
メイヤーソンはテレビや雑誌、インターネット等のメディアのイメージと個人的な物語を複雑に織り交ぜて再構築し、それを絵画に表わします。
国内初個展の本展では、現在進行している新シリーズを中心に発表します。自身の絵画から紙の版を作り、その版自体を支持体となる紙に重ね合わせ、版の表面を削りイメージを浮かびあがらせます。このユニークな工程はメイヤーソンが構想から実現までに2年以上もかけて完成させました。版がはがれ、徐々に現れる表面の有機的なイメージは、繊細ではかなく、そして独特の雰囲気をも合わせもちます。
展覧会の初日に合わせ、作家が来日いたします。是非ご高覧ください。
ジン・メイヤーソンは画家である。
画家という言葉が導く絵画の意味をここではどのように捉えるべきだろう。美術史上では、メイヤーソンの絵画作品は、19世紀以降の近代絵画の流れの中で位置付けられるのだが、この近代絵画をどういった理解の中で捉えれば良いのか実のところそれほど明快な説明がない。冒頭に挙げた自明のような絵画という言葉を改めて問い直そうとした理由はここにある。描かれるモチーフの違いや絵画表現の方法の違いについては、多くが語られるが、この平面という枠組みに何の変わりもない絵画の構造が近代以降一体どのように変化したのかが曖昧なのである。
ところで今回、メイヤーソンは日頃取り組み続けてきた絵画ではなく、ワークス・オン・ペーパー(works on paper)、つまり紙を支持体とした作品を発表することにした。ここで取り上げられるモチーフは、絵画ですでに取り上げている高速道路のインターチェンジ等だ。
カンバスに現れるイメージも、紙に現れるイメージも、現実を抽象化したアイコン(象徴)であるのことに変わりはないし、あくまでも画面という世界の中で完結する世界という意味でも同じ範疇に属する。それでも、この両者の間に差異が生まれるとすればその理由はどこにあるのだろうか。同じモチーフではあるが、カンバスにイメージを定着させるために編み出された油絵具は徹底した表面性においてその威力を発揮する。そして、カンバスはもっぱらこの油絵の具を文字通り支えるのだが、一方紙は、まるで刺青のごとく紙の組織内部にまで顔料は浸透することでイメージが生まれるプロセスを踏んでいる。この場合紙は支持体であると同時に画面そのものとしての現前性として立ち現れる。無論、カンバスの存在を直接的に示すために意図的に書き残したり、カンバスではないがブリンキー・パレルモのファブリック・ペイティング(Fabric Paintings)のように布そのものを(漂白等の変化はつけるものの)作品化した「絵画」も在るのだが、それは絵画の構造そのものの変容を意図したものとして理解すべきものだ。
メイヤーソンの紙を素材として作品には、油彩絵画以上にその身体の痕跡が直接反映している。紙に描く(書く)という行為は、紙に刻み込むという行為とほぼ同じであることを想起すれば、その側面が浮上することが分かるだろう。とは言え、デジタル・イメージの現出、それをアウトプットするインクジェットプリントという新たな技法が、素朴な紙と身体の間に介入し始めるとき、刻印といった指標的要素とは異なった次元、つまり指し示すものがそもそも存在しないという新たな事態へと導く。そして、19世紀からはじまる近代絵画のメディア・スペシフィックからミクスト・メディアの流れ等幾つかの変遷を経て、絵画も版画等も含めた平面作品が、また新たな段階を迎えていることを今回のメイヤーソンの作品は示唆しているように思う。
天野太郎
横浜市民ギャラリーあざみ野
主席学芸員
ジン・メイヤーソン(1972年、韓国、ソウル生まれ。アメリカ、ミネソタで育つ。 )
95年、アメリカ、ミネアポリス・カレッジオブアートアンドデザインで学士号を取得。97年、ペンシルバニア美術アカデミーで修士号を取得。
2003年、インデペンデントキュレーターのデイヴィッド・ハント氏のもとで学びはじめ、ニューヨーク・LFLギャラリーで初個展を開催し脚光を浴びる。2006年から2010年までパリにて活動。韓国・国立現代美術館のアーティスト・イン・レジデンスに招聘される。
その後ソウル(2010-12年)、ジャカルタ(2011年)、香港を経て、現在は韓国、香港に拠点を持つ。
彼の作品は世界中の美術館・ギャラリーで個展を通じ発表され、数々のパブリック、プライベートコレクションに収蔵されている。
近年の主な個展:Zach Feuer Gallery NYC (2004, 2006), Galerie Emmanuel Perrotin Paris / Hong Kong (2004, 2006, 2010/2013), The Saatchi Gallery London (2006), Micheal Janssen Galerie Berlin (2007), Galerie Nordine Zidoun Luxembourg (2008), Arario Gallery, Seoul and Cheonan (2009), Hakgojae Gallery Seoul / Shanghai (2013/2014) and ICAM museum, Korea (2014).
主なコレクション:the Solomon R. Guggenheim Museum, New York, The Saatchi Collection, London, the Vanhaerents Foundation, Brussels, the Yuz Foundation, Jakarta / Shanghai, the Taguchi Art Collection, Tokyo, and the Bangok O Museum, Bangkok
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