ヴィック・ムニーズ 「SMALL」2014 10.24 - 11.29オープニングレセプション |
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©Vik Muniz “Liver (Hepatocytes) cell pattern 1, Series of Colonies” 2014, S 101.6 x 101,6 cm / L 180.3 x 180.3cm, Digital C print |
場所:nca | nichido contemporary art
会期:2014年10月24日(金)-11月29日(土)
営業時間:火 – 土 11:00 – 19:00 (日・月・祝 休廊)
レセプション:10月24日(金)18:00 – 20:00 (作家も在廊いたします。)
この度、nca | nichido contemporary artは、ヴィック・ムニーズ(ブラジル)による新作個展を開催いたします。
ムニーズはこれまでに様々な素材を用いて素材とイメージの関係性について考察してきました。そしてスタジオから離れ、多くの人たちを巻き込んだ大きなスケールのプロジェクトも行っています。
本展では、限りなく小さい不可視の世界、1粒の砂の断片に城を描いた“Sandcastle” シリーズと、細胞を用いてイメージに転換させ作品化した“colonies”シリーズから選出し、構成します。私たちが何度も目にするシンプルなイメージを用い、スケールを極端に操作することによって鑑賞者に「recognition =再認識」させることで、対象のもつ意味を鑑賞者に改めて再考させます。
本展の作品はMITマサチューセッツ工科大学の合成生物学者(coloniesシリーズ)と、デザイナー(sandcastleシリーズ)の協力によって実現しました。
Vik Muniz “SMALL” 展によせて
制作活動の一環をドキュメンタリー映画として取り上げられ、ハーパース・バザール誌のイラスト写真にも選ばれる旬のアーティスト、ヴィック・ムニーズ。来春まで巡回中の「だまし絵II」展にも、ムニーズ作品が2点展示されている。カラフルなおもちゃが作り出す泣き顔の《自画像 悲しすぎて話せない バス・ヤン・アデルによる》と、MOMA所蔵ゴッホ作品の裏側に日本の輸送会社などの管理シールが貼られている様まで忠実に再現した《「裏面」シリーズ、星月夜》である。
ダブル・イメージの好例としてだまし絵展の候補に挙がったムニーズだが、選定過程でトロンプルイユの古典作例を見事に踏襲した《裏面》シリーズも浮上、だまし絵展出品作家多しといえども、異種の作風で2作品出品の数少ない作家となった。
彼の作品を目にしていつも思うのは、「?」→「!」という認識の流れだ。おもちゃでできたおもちゃの兵隊、黒い背景にダイヤモンドで浮かび上がるハリウッド女優、アニメ用インクの滴によるディズニーの肖像など、初見で何だろう?と思わせつつ、イメージと素材の関連がわかるとなるほど!と合点がいく。写真家でもあるムニーズに具象表現はお手の物だが、単なる忠実な描写ではなく、常に一ひねりして我々に別の側面を見せてくれるユーモアと驚きがあるので、パウル・クレーの「芸術とは見えるようにすること」という言葉も思い出した。
今回の新作展のシリーズSandcastlesは、海辺の砂遊びかと思いきや、最新鋭の科学技術との共作で、また意表をつかれた。ロワール地方を旅し、19世紀の光学転写装置であるカメラ・ルシダを使って古城のスケッチを行った彼が、インテルの技術者からナノテクを使えば砂粒にも絵が描けると聞いたのがきっかけという。砂という言葉の連想からナノテクとスケッチを結びつけるような発想の柔軟さと驚異の実行力は、彼の芸術活動の基盤にあり、規模としては正反対でも、地上絵や雲の絵など、これまでの制作にも見られる。もう一つのColoniesもMIT研修中に知り合った生物学者とのコラボにより、微生物が培養シャーレ内で織りなす幾何学的な模様をナノテクで撮影したもの。シンプルもしくは美しい形でも、大規模すぎるもしくは微少すぎると、簡単には見られないゆえ、写真という手法で可視可することにこだわっているようだ。同時代に敏感に反応しながら、結果は派手でも自分の生業として芸術活動を地道に行っているところに職人気質が現れている。
皆が知る対象の形を選び、象徴的な意味を付加しつつ、洗練された美しい画像に仕立てる技はダブル・イメージの申し子と言っていいだろうし、古典的主題もジャンルを超えハイテクを用いて今風に提示できる時代の寵児でもある。作風の多様性と手法の一貫性、身近なものとハイテク、伝統と流行、空撮と顕微鏡など、異なるものを結びつけながら新しいものを見えるようにし続けているムニーズは、実はとても正統派の芸術家であると私は思っている。
(中日新聞社文化事業部・だまし絵Ⅱ事務局 田中玲子)
<作家略歴>
1961年サンパウロ生まれ。 現在ニューヨークとリオデジャネイロを拠点に制作活動中。
近年の主な個展: Tel Aviv Museum、テル・アヴィヴ、イスラエル (2014)、Museo de Arte Contemporaneo Lima、リマ、ペルー (2014)、Museo Banco de la República、ボゴタ、コロンビア(2013)、Centro de Arte Contemporánea de Málaga、マラガ、スペイン (2012)、Museu Colecção Berardo,、リスボン、ポルトガル (2011)、nca | nichido contemporary art、東京、日本 (2010) 他多数。ヴィック・ムニーズの作品は、世界のプライベート、パブリックコレクションに収蔵されている。
*Vik Muniz来日 特別イベント
-Vik Muniz ドキュメンタリー映画「Waste Land / ごみアートの奇跡」特別上映
日時:10/23(木)21:00 – 23:10 *上映後、ムニーズによるトークショーを行います
場所:シアター・イメージフォーラム渋谷
TOKYO DESIGNERS WEEK 内、“フューチャーラボ東北フォーラム”パネルディスカッション登壇
-地球の未来へ向けてーアーティストの役割と責任 -
日時:10/25(土)17:00 -
場所:明治神宮絵画館前(http://www.tdwa.com/2014/join/future-labo_tohoku.html)