Identity X -fusion of memory ~ memory for the future-2014 5.23 - 6.21オープニングレセプション: アーティスト:飯山由貴 / 石黒昭 / 上村洋一 / サガキケイタ / 村山悟郎 |
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会場:nca | nichido contemporary art
会期:2014年5月23日(金)-6月21日(土)
営業時間:火 – 土 11:00 – 19:00 (日・月・祝 休廊)
レセプション:5月23日(金)18:00 – 20:00
参加アーティスト:
飯山由貴 Iiyama Yuki | 石黒昭 Ishiguro Akira| 上村洋一 Kamimura Yoichi | サガキケイタ Sagaki Keita | 村山悟郎 Murayama Goro
この度、nca | nichido contemporary artは、グループ展“identityX- curated by Kazuaki Watanabe -”を開催いたします。
本展はこれまで「identity」をテーマに、美術館の学芸員やインディペンデント・キュレーターの方々にキュレーションをしていただきました。10回目の節目にあたり、自ら作品を選び、購入し、自身がキュレーターとなってコレクションを構築する、世界のアートシーンにも重要な影響力をもつ存在「コレクター」の視点を取り入れるべく、渡辺一明氏に本展の企画構成をお願いいたしました。
渡辺氏は、福島県郡山市で製麺会社を経営され、飲食店のコンセプトから味作り、設計インテリアまでトータルにコーディネートし、要望に合わせて製造される生中華麺は200種類以上にのぼります。氏は、クリエイティブな発想の原点はコンテンポラリーアートにあると言われ、30年以上にわたり世界中のアーティストの作品を収集し続け、さらにコレクターとして若手アーティストのサポートや、時にはアドバイスも行っています。
そして、2011年の東日本大震災で被災されたことがきっかけとなり、一昨年作品の収蔵庫と展示スペースを兼ねたプライベートビューイングルーム、Space Wを建てられました。「再生 | 再構築」をテーマとしてコレクションの中から作品を選び、展示されるというSpace Wには、渡辺氏の思いが強く込められています。
本展でnca | nichido contemporary artをSpace Wの別館として再現していただきます。
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Identity X -fusion of memory ~ memory for the future-
「わたしは何者か?」これは精神世界において究極の質問である。ゲストキュレーターを引き受けるにあたり身構えたが、はるか遠い昔より論じられ質問の的がとても大きく、どの答えも間違いにはならない。そう思って自由にやらせて頂くことにした。「私は何から創られているか?」という視点に変化させ、「私は記憶から創られている」という着地点からの再構築を試みる。
人は、その自我は、過去の自分の体験・経験や見聞・調査・学習した記憶から、さらに視点を変えると受け継がれたDNAから、様々な記憶から成り立っている。東日本大震災から3年が経過したが、大地震・大津波の恐怖の体験やその映像、原発事故と放射能への恐怖と果てしない事故収束処理の苦悩、等々、我が国においてこの暗黒の記憶から政治家も企業家も学者も何人も逃れることは出来ない。芸術家の「わたし」という構成要素に暗黒の記憶が加わった今、調査と再評価・破壊と再生の思考を繰り返し様々な記憶と合成させた新たな記憶を創造させねばならない。5人の作家それぞれの記憶の提示が影響し合いそれらが融合した空間の中に、前向きな明るい未来の記憶の断片を見つけて欲しい。
飯山由貴は、日本のシュルレアリスム絵画の出発点とも評された絵画『海』と作家の古賀春江に注目した。関東大震災後に描かれたその絵画は、人間と人工物の対比や大きな海とグロテスクな構築物が描かれ原発事故を思い出してしまうが、このモダンな絵画と作者について飯山独自の視点と調査により、同じ震災後に生きる我々に対して新たなイメージを提示する。狂信的な程にディティールにこだわった石黒昭のフェイクの大理石は、太古の記憶から甦り、繰り返す生と死の記憶へと進化して「再生の部屋」を誕生させる。大震災に衝撃を受けた上村洋一は、震災直後にエリック・サティの楽曲ジムノペティを断片に破壊し、断片音を複合させて耳を襲わせ、断片の楽譜をモビールにして浮遊させ、破壊と鎮魂の作品を発表した。今回は自然の音のサンプリングや新たな楽譜を利用しながら、静かに響き渡る音の中とモビールの揺らぎの中に明るい断片を散りばめる。
サガキケイタは、受け継がれてきた民話や伝承はそこで暮らす人々の象徴であり、それらの集合体こそがその地域のアイデンティティであると考える。福島県内の民話や伝承を125のキャラクターで描き「再生」のシンボルとし、その記憶の集合体を未来に向けて歩き出させる。村山悟郎は、生命システムの本質に迫ろうとして生まれた概念オートポイエーシスを基盤として作品を造る。「わたし」とは動態でありその記憶も常に変化する。繰り返す〈紐を織り〜下地を作り〜絵を描く〜それを見る〉行為の中に、壊された環境や損なわれた肉体と精神が再生する光景を創り出せるのか?…この知的挑戦は興味深い。
渡辺一明
協力:AISHO MIURA ARTS | CASHI