ジャナイナ・チェッペ「Endless」

ジャナイナ・チェッペ「Endless」

2012 11.22 - 12.26

オープニングレセプション
11.22 (木) 18:00 - 20:00

Janaina Tschäpe "Soundless" 2012, 111.7 x 152 cm, Mixed Media on Paper ©Janaina Tschäpe
Press Release

会場:nca | nichido contemporary art
会期:2012年11月22日(木) – 12月26日(水)
営業時間:火 – 土 11:00 – 19:00 (日・月・祝 休廊)
レセプション:11月22日(木)18:00 – 20:00

この度、nca | nichido contemporary artは、ジャナイナ・チェッペの新作個展、「Endless」を開催いたします。
ジャナイナ・チェッペは自身の体験や身体表現を通し、映像や写真、ドローイング、ペインティングなどさまざまな素材を用いながら生命の根源、自然との調和を表現しようと試みています。
ncaにて4回目の個展となる本展では、今展覧会のために制作された新作ドローイング12点、映像作品1点を発表いたします。

我々の身体の約60%を占める体液。その濃度は海水とほぼ同じだ。
ジャナイナ・チェッペの名前、”Janaina”は、アフリカ系ブラジル人にとって、「水の神」を意味する。この名前を授かったチェッペにとって、「水」、「海」、そしてそれらの「流れ」は、重要なモチーフとなっている。チェッペの作品には、海水や人体の生命現象たる体液のたゆまぬ流れに従うと同時に、その流れをコントロールしようとする欲望が混じりあっている。
生物学では、代謝と呼ばれる細胞どうしのやりとり、および同じ型の個体の遺伝と生殖に生命の根源があると考えられている。そのような性質を持つ最小の単位が細胞であり、生命の最小の単位である。彼女のドローイングは、海中のアメーバやプランクトンなどの原始的な生き物・単細胞生物の運動を描いているように見えながら、細胞膜に包みこまれたミトコンドリアやリソソームなどが生命を維持すべく動き続ける様子を描いているかにも見える。
とりわけ、内側に海水を連想させる青色の文様を秘めながら、それを覆う紙が隆起するドローイングは、海をつかさどる何者かが海中の種々の生命体に意思を与えたかのような神秘的な様相を見せる一方、生命体の被膜にメスを入れ、内部の構造を明らかにしようとする生物学者の態度をも思わせる。チェッペは、海の神話を語り上げると同時に、生命の源たる海を科学者のように観察しているのだ。
神話と自然科学。ジャナイナ・チェッペによる作品には、共通してヨーロッパ的な合理主義と、合理主義に相容れないエキゾチックな神秘思想が結びついたかのような魅力がある。それは、チェッペ自身が、ミュンヘンでドイツ人の父親とブラジル人の母親の元に生まれ、ブラジル、サンパウロで育ったことが深く関係しているのだろう。彼女の作品の中に見られる、海、宇宙、自然界の変化、生物の進化、性、そして神話的な要素。それらの作品を目の前にした者は、人間もまた、海を源とする微細な生物から進化した一個の生命体であることを思い出さずにはいられない。
東谷 隆司

作家略歴
1973年、ドイツ、ミュンヘン生まれ。ブラジル・サンパウロで育つ。92年よりドイツ、ハンブルグ造形芸術大学 (Hochschule fur Bilende Kuenste )でファインアートの学士号を取得。94年、ブラジル、サルバドール近代美術館 (Museu de Arte Moderna, Salvador)でアーティストインレジデンスに参加。97年、ニューヨークのスクール・オブ・ビジュアル・アーツで美術修士号を取得。2001年、スペイン・マドリードのレイナソフィア美術館での個展「Sala de Espera」で脚光を浴び、その後彼女の作品は東京やサンパウロ、ロンドン、ベルリン、アメリカなど世界中で個展、グループ展を通じて発表されている。近年の展覧会歴としてIrish Museum of Modern Art, (IMMA), ダブリン、アイルランド、Carlier | Gebauer ベルリン、ドイツ、Sekkima Jenkins. Co、ニューヨーク、アメリカ、トーキョーワンダーサイト渋谷、ARUTIUM / Zplatz, 福岡、Contemporary Museum of Art, St. Louis、アメリカMuseum of Contemporary Art, ツーソン、アメリカ など多数。

東谷隆司
インディペンデント・キュレーター。1968年、三重県四日市生まれ。東京藝術大学大学院美術研究課修了。世田谷美術館に5年間勤務した後、東京オペラアートシティギャラリー、森美術館アソシエイトキュレーター等を経て、現在、フリーで展覧会企画、執筆活動を行う。過去の主な展覧会企画に「時代の体温ART/ DOMESTIC」、世田谷美術館、東京、1999、「OP TRANCE!」、KPOキリンプラザ、大阪、2001、「GUNDAM 来たるべき未来のために」、サントリーミュージアム天保山、大阪、上野の森美術館、東京、2005、他全6会場巡回。「釜山ビエンナーレ2010」アーティスティック・ディレクター、釜山市立美術館、他、韓国

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